頻尿の原因と症状


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正常な排尿と、多様な排尿障害


「排尿の回数が多い状態が頻尿(ひんにょう)」というのは、なんとなくイメージできると思います。

ではトイレに行く平均的な回数、ごく普通の正常な排尿の状態とは、どのような状態を指すのでしょうか?


通常は膀胱に200~300ミリリットルの尿がたまると、トイレに行きたくなります。

成人の一日の排尿量は、合計で1~1.5リットルに達します。

回数にして5~7回程度、一回のトイレで150~300ミリリットル程度の尿が、30秒前後かかって排出されます。

ただし一日の排出量がほぼ1~1.5リットル程度なら、これより回数が少なくても、そう気にする必要はありません(ただし一日400ミリリットル以下だと、老廃物等の排泄が不十分な状態として「乏尿(ぼうにょう)」の診断がつきます。)。

一日に9~10回以上と逆に多い場合は、やはり一度泌尿器科に相談するほうがよいでしょう。


症状の放置は危険~原因特定が最優先


『トイレの回数が近いことで痛みを感じたり、体調に変調をきたしている、あるいは仕事面などで自身の日常生活の質を大きく下げているといったことさえなければ、排尿回数はそれほど気にする必要がない』といった意見は、確かにあります。


しかし頻尿を起こす原因は多岐に渡っているため、気にせず放置するという姿勢はとても危険であると言わざるを得ません。


心因性の頻尿のケースはまだしも、脳梗塞などの脳血管疾患や糖尿病を原因とする場合もあり、この場合は放置すると原因となる疾患の症状が進むことから、最終的に深刻な結果をもたらす恐れがあります。

(なお糖尿病については、糖尿病 3分で知る症状と全体像~治療・食事・予防をご参照ください。)


何回の排尿から、頻尿に該当するか


「最近トイレが近くなった、回数が増えた」と薄々自覚しても、医学的に何回くらいから病気と判断されるのか気になるところです。


これは「起きている日中」と「就寝中の夜間」で分けて考える必要があり、日中にトイレに行く回数が多くなる症状は「昼間頻尿」、就寝中に目が覚めてトイレに行くのは「夜間頻尿」に分類されています。

正常な排尿と、多様な排尿障害 で記したとおり、一日の一般的な成人の排尿回数は5~7回程度ですので、これを超えて日中に8~10回程度トイレに行くようならば、昼間頻尿の疑いが強いことになります。


一方夜中に一度でも起きてトイレに行くようであれば、夜間頻尿の疑いが強いとされます。

「毎日2回は、排尿のため夜中に目が覚める」というのであれば、おそらくは確定的にそう診断されるでしょう。


過活動膀胱とは


「過活動膀胱(かかつどうぼうこう、OAB)」とは、患者数にして800万人以上がいると推定される、排尿障害の一症状です。


尿の役割と、排尿の基本的なメカニズム でご説明したとおり、脳が膀胱に指示を出して排尿のコントロールをしているわけですが、なんらかの原因により膀胱の筋肉が勝手に収縮し、急に我慢できないほどの強い尿意(尿意切迫感)を感じるというのが主な症状です。

単に排尿の切迫感を感じるのみならず、頻尿や切迫性の尿漏れ(尿失禁)を伴うことも少なくありません。

尿そのものに異常があるわけではないので、尿検査でも見逃されることがあるようです。


前立腺肥大症の概要と症状


前立腺は、膀胱の出口から尿道を包むように存在する男性特有の臓器です。

前立腺は男性ホルモンの影響を強く受けているため、男性ホルモンの分泌が少なくなる50歳前後から、腺組織が肥大しやすくなります。


加齢とともに前立腺の内側に良性のしこりができてそのサイズが大きくなってくるのですが、この状態が前立腺肥大症と呼ばれます。

前立腺肥大そのものは病気ではありませんし、即座に排尿トラブルなどに直結するわけでもありません。

今日では早い人で40歳代の半ばから発症し、60歳以降の男性で2人に1人の割合で前立腺の肥大症状が見られるそうです。長生きすればほとんどの男性が発症するのが、この前立腺肥大症です。


細菌の感染による頻尿


以下の病気は、頻尿の症状が多くみられます。


膀胱炎

泌尿器科の病気のなかでもっとも多いのは、膀胱炎です。

女性が頻尿や排尿時の痛みを自覚したときは、まず膀胱炎を疑ってかかってもよいほど頻繁にみられる症例です。

粘膜の弱い人や体質的に冷え性の方、あるいは体の抵抗力が衰えている人は、発病のリスクが高まる傾向にあります。


女性は男性よりも尿道が短いこともあり、さまざまな細菌に感染しやすいことから、細菌性の急性膀胱炎に何度もかかる人なども珍しくありません。

急性といっても、繰り返しかかっているうちに慢性化したり、あるいは細菌が腎臓に達して急性腎盂炎を併発したりする恐れもあるので、いずれにせよ早めの対処が必要になります。


頻尿の原因と、間質性膀胱炎


頻尿の原因は多岐に及びますが、原因としてもっとも多いのは、細菌の感染によって膀胱・尿道・前立腺が炎症を起こすケースです(細菌の感染による頻尿 )。


他に原疾患となる病気があって、その症状として頻尿が起こることもありますが、器質に特段の異常がなく原因の特定が難しかったり、あるいはほぼ原因不明に近いものもあります(特発性過活動膀胱 など)。


その代表的なものは、以下のとおりです。


加齢による頻尿

特段病気というわけではなく、単純に歳をとることによって膀胱の弾力性が失われたり腎臓の機能が衰えたりしてトイレが近くなることは、男女とも珍しくありません。

夜中に何度もトイレに行きたくなる「夜間頻尿」や、膀胱内に尿が残ってしまうことで「残尿感」を感じるのはその代表例です。


夜間頻尿 原因ごとに異なる対策


睡眠中に尿意をもよおしてトイレに行きたくなる。これがひんぱんに起こるのが「夜間頻尿」です。


排尿に問題のない人の場合、夜眠っている間に尿意によって目が覚めることは、一回あるかないか程度です。

統一された夜間頻尿の定義はありませんが、臨床上は夜眠りについてから朝起きるまで2回以上トイレに行くのが普通になったら、夜間頻尿と判断されるようです。

日本でも夜間頻尿にかかる世代別調査があり、40歳代で夜間に1回以上トイレに立つ人が男40%強・女40%弱、50歳代では男60%強・女60%弱に達しています。

夜間頻尿は高齢になるほど増加する傾向にあり、70歳以上ともなると男女問わず9割が、就寝中一度はトイレに立つそうです。


単純に考えると、寝ている間に作られる尿の量が多くなるから、夜間にトイレに行く回数が増えるわけですね。

ではなぜ、夜間の尿量が特に多くなるのでしょうか?


頻尿対策と漢方薬~西洋薬との違い


頻尿と薬 蓄尿障害か排尿障害か では頻尿の薬について述べましたが、これは西洋薬についてのものでした。

ここでは、頻尿に効果があるとされる漢方薬についてご説明します。


そもそも漢方薬は、1967年に保険薬として認可され、日本の病院でも9割近くの医師が必要に応じて処方しているとされます。

現在、およそ150種類の漢方薬が保険適用の対象となっています。泌尿器科においても、近年は漢方薬の処方率は高まってきているようです。


女性に多い尿失禁~主な症状と治療


女性の排尿障害は男性に比べ、原因や治療法がまだ明確になっていないものも多いのが現状です。

なかでも女性にとって特に切実なのは、頻尿の原因と、間質性膀胱炎でもご説明した、自分の意志とは関係なく尿がもれてしまう「尿失禁」ですね。


「尿失禁」に悩む女性は本当に多く、成人女性の4人に1人・出産経験者のおよそ4割にあたるとした調査もあります。

膀胱が収縮する力は一般に加齢によって衰えるため、閉経後の尿失禁も多いものの、30~50歳代の女性にも多く見られます。


「頻尿」と「多尿」の違いとは


オシッコをしていて「やけに排尿量が多いな‥」と気になるときは、誰にもありますね。単なる水分の取り過ぎならよいのですが、「多尿」という症状も考えられます。

この「多尿」と「頻尿」、両者が異なる位置づけにあることをご存知でしたか。



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